激おこ転生幼女のモフモフ無双!

「う、ううん! なんでもないよ。お兄さん、道中気をつけて!」
「そうか、では」
 気力を寄せ集め、僅かにでも気を抜けばぐらつきそうになる足を踏ん張って答えた。そうしておばあさんと共に、小さくなる青年の背中を見送った。
 私が泣くのはおかしいとわかっていた。だけど眦からあふれる涙は、意思の力で抑えることはできなかった。
「お嬢さんまで、泣いてくれているの?」
 私の頬を伝う涙に、おばあさんが皺がれた手を伸ばす。長年の重労働への従事を思わせる、固く、節くれだった指だった。だけど目もとに触れたガサガサの指先は、温かくて優しい……。
「っ!」
 おばあさんの温もりに触れ、新たな涙がほとばしる。
「あらあら。お嬢さんは、本当に優しい子ね……。あの子もね、優しい子だった。きっとお国にとっては、あの子の命は捨て駒のひとつにすぎないのでしょう。……だけど私にとっては、大事な大事な、一人息子だった。そうして自慢の息子だったわ」
 おばあさんは私の頬を伝う涙の雫を拭いながら、ぽつり、ぽつりと語りだした。