「モッツァー皇国民の心情は察するに余りあるわね。東のドリアナ帝国にしてもそう、無能な王を戴く国民は本当に報われない」
「ああ、我がユーンデル王国のジョセフ陛下ほど国民思いのよき君主など他にはいない。どこの国も、国民レベルでは、我が国の支配下に入りたいというのが本音だ」
「そうね。もう、いっそのことジョセフ陛下がうちの国に融合してあげたらいいのに」
「馬鹿をお言いじゃないよ。陛下は自ら戦争行動に走る愚など、絶対になさらない」
「そんなのはわかっているわ。けれど、このままじゃ――」
 そのまま、パパとママは更に踏み込んだ話を始めた。私はそれ以上、二人の会話の内容を追っかけるのをやめて、ぼんやりと窓越しの空へと視線を移す。
 ……モフモフの竜、触りたいなぁ。日本での二十二年の人生を終えて、私は今、ずいぶんと遠い空の下にいる。
 日本での記憶、そして神界での記憶も、今でもちゃんと覚えている。だけど、私が赤ちゃんだからか、物事を突き詰めて考えるというのが難しい。