「……ドラゴン殿、あなたたちはこれから、自分の城に帰られるのでしょう? フローラには明日の朝、俺からしばらくの留守を伝えておきます。それから今後、王より正式な謝意表明もありましょうが、王の名代を賜る騎士団長として、私から取り急ぎお伝えいたします。此度のモッツァー皇国との戦争終結について、貴殿らの協力に、心より感謝を申し上げます」
 口では丁寧な礼を伝えながら、俺の内心は少し、違っていた。
 危険は全て、国防の要となる俺たち騎士が担って然るべきだ。間違ってもひとりの少女が、その肩に背負い込んでいいものではない。俺の腕に人肌の温もりとやわらかな重みを伝える彼女を、どうか危険に巻き込んでくれるなと、人の目には直視するのがまぶしすぎるドラゴンの目を逸らさずに見据えながら、思っていた。
 二匹のドラゴンはしばらくの間、品定めするように俺を見下ろしていたが、やがて興味を失ったのか、ツンツン、スリスリと互いの鼻先を寄せ始め、仲良く並んで飛び立っていった。