うららかな春の陽光が差し込む窓際のベビーベッド。
 澄み渡る晴天の空を飛ぶ、大小さまざまな大きさのモッフモフのドラゴンンを眺めながら、私は泣いていた。
「おぎゃー(幸いなわけがあるかー)!」
「あらあらフローラ、おっぱいかしら? おしめかしら?」
「おぎゃー(ちゃうわー、背中が痒くて堪らないー)!」
「わかったわ、抱っこね? ふふっ、フローラは甘えんぼさんね」
 ママが艶やかな金髪を揺らしながらベビーベッドに歩み寄り、嫋やかな手で私をベビーベッドからそっと抱き起こす。優秀な薬師でもあるママからは、ふわりと清涼な香りがした。
「ふぎゃ……」
 本当は「抱っこ」じゃなかったけれど、ママから香るスーッとした匂いのおかげで、痒いのが治まった。……ママ、やるな。
「ふふ。いい子ね、フローラ。私の可愛い赤ちゃん、大好きよ。ママは幸せ者だわ」
「きゃっきゃ!」
 私も、ママ大好き!
 ――コンッ、コンッ。
「入るよ」
「あらパパ、おかえりなさい。早かったのね、近隣の領主様たちとの会合はどうだった?」