今年もインターンを受け入れる時期になった。店舗で指導する丹羽くんは女の子の質問にも笑顔で答え、熱心に教えている。

「いいよねー女子大生。キラキラしてるよね」

会社に戻ってからフロアで同僚と可愛い女の子の話しをする丹羽くんが憎らしい。

愛想振り撒いてるのはどっちだ。イライラする……。そんなに女子大生が可愛いなら強引にキスでもすれば落とせるんじゃないか。というか、いきなりキスしてセクハラで訴えられてしまえ!

私は今までの丹羽くんへの気持ちが完全に裏返るのを感じていた。





各部署の書類の提出期限が迫り、社内を走り回って丹羽くんを探していた。
あと探していないのは喫煙所だけか……。

喫煙所に近付くと丹羽くんと女の子の声が聞こえた。私は壁に隠れてこっそり様子をうかがった。丹羽くんとインターンに来ている学生の子がタバコを吸っていた。
あれほど禁煙しなって言ったのに! あの子も呑気に一緒に吸ってる場合じゃないでしょ……。

「丹羽さんっていっつも学生にこんなに熱心なんですか?」

「まーね、俺の部下になるかもしれないしね」

「じゃあ連絡先交換してください」

「いいけど、俺からは連絡しないよ。そういうのまずいから」

「いいですよー、私からいっぱい送っちゃいますから!」

ちょっと! この子何を言ってるの!? 企業の社員に私的なメッセージは非常識だって! 丹羽くんも丹羽くんだよ!

私は出ていって怒鳴りたい衝動を必死で抑え、その場を離れた。





20時になっても丹羽くんはまだ社内に残っていた。
フロアには私と丹羽くんだけ。丹羽くんが書類を出さないせいで今の気まずい時間がある。
他部署の丹羽くんのデスクにわざわざ私が赴いて逃げないよう監視する。
やっと全ての書類が揃い、私はプリンターの電源を切った。