幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜

「『青嵐』の青役と嵐役だよ」


唐突に聞こえた女性の声に、あたしたちは驚いて入口の方を振り返った。


ドアの前には制服に身を包んだ、ショートカットの生徒がこちらを伺っている。


美保さんは彼女にひかり先輩、と呼びかけた。


「灰野の知り合い?」


「中学の先輩なの。そうか、ひかり先輩演劇部でしたっけ。これから部活ですか?」


ひかりと呼ばれたショートカットの彼女は、部室に足を踏み入れながら口を開く。


「訳あって部活には顔出してないの。今日は荷物取りに来ただけ」


ひかりさんはダンボールの中からいくつかの箱を取り出して抱えた。


「『青嵐』は演劇部の伝統だから、その2役に選ばれた子だけが、その壁に名前を書かれるわけ」


「へぇー。じゃ、今年は日菜子先輩も書かれるってことですね」


すごいなぁ。


あれだけ部員がいる中での代表ってことだよね。


でも、ひかりさんはあたしの言葉に表情を硬くした。


まるで拒絶するような印象を受けるその表情に、あたしは眉を顰めた。


そして、日菜子先輩の言葉を思い出す。


──── 『これは元々、ひかりちゃんが着る予定だったから……』


ひょっとして、“ひかりちゃん”ってこのひかりさんだったりするんだろうか。


「私はもう関係ないから、あとは部員に聞いて」


これ以上話したくない。


言外に含まれる頑なさに、あたしは思わず口を噤んだ。


部室から出ていこうとするひかりさんを白川先輩が呼び止める。


「この部室の呪い、ご存知ですか?」


「知ってるけど、それが何?」


「怖くないんですか」


「不思議と。……ごめん、急ぐから」


今度こそひかりさんが入口に向かった時だった。


ひかりさんの足がぴたりと止まり、肩が揺れた。