「とりあえず情報を整理しよう。そうすれば見えてくるものもあるはずだ」


生徒会室に戻ると、白川先輩は開口一番にそう言った。


そのまま旧体育館で詳しい話を聞いても良かったんだけど、12時になったら午前中活動している部活から鍵の返却があるし、あまりの暑さに藤原がダウンしたんだ。


いつもゲームばっかりやってるからそんな風になるんだって。


てなわけで藤原はパイプ椅子を4つ縦に並べて、その上で干からび中。


仕方がないから残りの3人と岩橋さんで机を囲む。


「まず、1番初めにおかしいと思ったのはいつですか?」


「今の演目が始まってすぐくらいだから……6月の中旬くらいかな」


「その時は何が」


「今回の演目『青嵐』って言うんだけど、伝統的な演目で、毎年同じ衣装を調整して着るんだ。その衣装がなくなっちゃって」


白川先輩が聞いて、岩橋さんが話してくれたことを、美保さんはホワイトボードに書き込んでいく。


「そういった変なことはどのくらいの頻度で起こるんですか?」


「だいたい週に2、3回。多い時は1日に何回も」


うわぁ。


あたしは顔を引きつらせる。


1日に何度もってことは、あの女の人の声も結構な頻度で聞いてるってことだ。


ものがなくなるだけならまだ我慢できるけど、ポルターガイストまで起こったら堪らない。


「起こるのは部室だけ?」


「そう。ただ、今はまだ舞台上にものを置いてないからなくなるものがないっていう可能性もあると思うけど」


「演劇部の部員さんはみんな被害を受けてるんですか?」


ホワイトボードからこちらに視線を移しながら美保さんが尋ねる。


「全員ではないけど、ほとんどの子が女の人の声を聞いたって言ってる」


「なるほど」


白川先輩はそこで一旦言葉を止めて、机の上で指を組む。


美保さんも取り敢えずマーカーを置くと白川先輩の隣に腰を下ろした。