【 第三話: あと5分だけ 】

 ――そんなやり取りが二週間ほど続いたある日、私はいつものように、乗り継ぎの電車と、向かいのホームにいる彼を待っていた。

 でも、いつもいる場所に彼はいなかった。

 何故いつもの場所にいないのか分からず、私は向かいのホームをキョロキョロと彼の姿を探していた。
 そんな時、彼からこんなコメントが私に届いた。

『今日は、5分後の電車に乗るので、向かいのホームで会えませんが、執筆頑張って下さいね♪(^-^)/』

「えっ? 今日は、5分後の電車なんだ……」

 何故だか、少し残念がっている自分がいた。
 直接話したことはないが、いつも向かいのホームでコメントを送ってくれている彼がいないのは、少し寂しい気持ちだった。
 すると、続けて彼からこんなコメントが届いた。

『今日、僕、田舎へ帰ります』

「えっ? どうして?」

 私は、彼にこう聞いてみた。

『田舎へ帰っちゃうんですか?』
『うん。実は小説家になる夢を諦めて、実家の家業を継ぐことになったんだ。だから、今日はいつもより5分あとの特急で実家へ帰ります』

「(えーっ! 『あと5分』か……。でも、私この電車に乗らないと学校遅刻しちゃう……。あっ、電車来た! ど、どうしよう……)」

『ガタン、ガタン……、プシュ~……』
『ガラガラガラ……』
『ピリリリリリリ……』
『プシュ~……、ガラガラガラ……バタン』
『ガタン、ガタン、ガタン、ゴトン……』