【 第二話: 知ってる『いいね』 】

 ――次の日も、彼は向かいのホームの昨日と同じ位置で、電車を待っていた。

 彼が私を見つけると、またニコッと笑って、私に手を振った。
 私も、少し照れながら、また小さく胸の前で手を振った。
 すると、彼はスマホに何か打ち込んでいる様子だった。
 しばらくすると、こんなコメントが私に届いた。

『小説読みました。とても面白かったです』
『ありがとうございますm(__)m 見て頂けたんですね』
『はい。この次の展開も気になってしまいました。私も学園ものの青春ラブストーリーが好きなので、こういう作品は見てしまいます(^-^;』
『ありがとうございます。ところで、ご自身は小説を書かれないのですか?』

『昔は書いていましたが、今は「読み専」です(笑)。 今日も続きの更新はありますか?』
『はい。また22時くらいに更新予定です』
『楽しみにしています。無理せずに頑張って下さいね(^o^)/』

 そのコメントを見て、彼を見ると、また来た電車に乗り込み、昨日と同じ場所で私に手を振っていた。
 私も、昨日と同じように小さく胸の前で手を振った。
 昨日と少しだけ違っていたのは、私にちょっぴり笑顔があったこと。

 しばらくすると、私の書いたコメントに『いいね』が付いた。

 その時、春のやさしい風が、私の少し伸びた髪をサラサラと揺らしながら、彼の乗って行った方へ、通り抜けて行った。