* * *


「理乃ちゃん!大丈夫っ?」

「ごめんね。琴美」


琴美が私に駆け寄って跪いた。

そして私の手を握り締めた。


後から部屋に入ってきた優弥と河野。

「優弥ごめん。自転車返してくれた?」

「ちゃんと返したから心配するな」

優弥はいつものように私の首に触れて体温を計る。

「神田と話すのはいいけどちゃんと休んでろよ」

「うん。早く済ませるから、早く家から出て行って」

「お前…。分かったよ。健二行くぞ」

「…分かった。理乃、また後で来るからな」


!!


部屋に来たばかりの優弥と河野だけど、琴美と二人きりで話をしたくて早々に追い出した。

本当は河野の顔を見ないようにしてたのに、声を聞いた途端に河野と視線を合わせてた。

河野が私の名前を呼んだから。

そして優弥に続いて部屋を出て行く河野の後ろ姿が、あの日の河野と重なって見えた。