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「中学の頃から、夢に嫌がらせをしていたのは朱莉だね」

「……っ」

「やりすぎたね、朱莉」

「っ虫はやってないよ! ……あれは、私じゃない!」


 奏多の腕に掴まり、必死に訴える。


「もう、俺に話し掛けるなーー」

「っ……!」


 突然冷たい表情へと変わった奏多は、そう告げると私の手を払いのけた。


「お前は、やりすぎたんだよーー朱莉」


 私の耳元でそう冷たく囁いた奏多は、夢の鞄を机から取ると私を置いて教室を出て行った。




 私はーー

 私はただ、奏多の1番になりたかっただけだった。

 奏多がこの学校へ行くと聞いたから、私はここを受験した。
 夢が行くから、奏多はこの学校へ進学することを決めた事はわかっていた。

 それでもーー
 側にいれば、いつかは振り向いてもらえるかもしれない。そう、思ったから。

 でも、奏多はいつだって夢の事しか見ていなかった。
 私なんて、ただ夢と友達だったから奏多の近くにいれただけ。

 高校に入ると、以前にも増して夢と奏多の距離は近くなっていった。
 ーー私は、それが許せなかった。

 だって、夢は今でも涼の事が好きなのにーー


 2人が付き合い出したという噂を耳にした時、私は大きく絶望した。
 夢が憎くて憎くて、仕方がなかった。


(どうして、私から奏多を奪うのーー?)


 それからの私は、以前から度々していた夢への嫌がらせを毎日するようになった。

 だからーー罰があたったのかもしれない。

 自分のした行動のせいで、私は完全に奏多を失ってしまったのだからーー



 1人取り残された教室で、床へと崩れ落ちるとヘタリとその場に座り込む。

 床に付いた掌をキュッと握り締めると、まるで後悔と悲しみの念を爆発させるかのようにしてーー

 私は天井に向けて、思い切り大きな声を上げて泣き叫んだのだった。




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