勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。

「九条さんも、私をだまそうと思いますか?」




「なんのために?」




「……うーん、なんのためだろう?」




「つうか、それ、本人に聞いてる時点でアウトだしな」




「あ、そっか!」




するとこらえ切らないように、九条さんが吹き出した。




「彩梅、バカすぎる」




……ひどい。




「だって、九条さんが騙すとか騙されるとか、



恐ろしいことを言うから!」




すると、テーブル越しに手を伸ばした九条さんに



くしゃりと頭をなでられて。



わわっ。



心臓、止まるっ!




「ちゃんと彼氏とか好きな奴をつくって、



いろんな経験をしたうえで、



見合いで結婚するかどうか、考えた方がいいよ」




「私は、九条さん以外のひとと出かけたいとか、



彼氏がほしいとか、思いません」





ぽつりと本音。





「彩梅は俺のことしか知らないから、そう思うだけだよ。



これからいろんな出会いがあるだろうし、



俺よりいい男なんて山ほどいるんだから」





……本当かな?