勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。

「たとえ形だけだとしても、



彩梅と『婚約』を前提でつきあってる以上は、



彩梅だけに決まってんだろ」 




全く相手にされてないのに、



そ、そんなこと言われても困る……!





「彩梅、また顔、赤くなってる」





「そ、そういうことは、冗談でも言っちゃだめです! 



本気じゃないって分かっていても嬉しくなっちゃうし。



赤くなっちゃうし!」




「本気で言ってるんだけどな。



それより、そんなに簡単に顔を赤くすんなよ。



もうちょっと男に慣れておかないと、本当に変なやつにだまされるぞ。



いつか見合いで結婚するにしたって、



ちゃんと自分を幸せにしてくれる男か



見極められるようになっておかないとダメだろ」





「そうは言っても女子校なので…」





それにすぐに顔が赤くなっちゃうのは、相手が九条さんだから。





ほかのひとにこんなこと言われても、こんなに赤くはならないはず!





「もし彩梅が変なやつと結婚して、



西園寺家を乗っ取られたらどうすんの?」





「え?……乗っ取ら、れる?」




サーっと血の気が引いていく。




「西園寺家との縁を欲しがるヤツなんて、



この世の中には山ほどいるだろうし」




「そんなこと、考えたこともなかった……」




「大事なことだよ、相手の本質に気づけるかどうかって」




九条さんの真剣なまなざしに、うなずくものの。