「真桜はもう日本にいないんだから、仕方ないでしょう?」



音を立てずに階段を下りていくと、



お父さんをなだめるお母さんの声が聞こえてくる。




「会長の持ってきた縁談で、相手は九条家だぞ?」




「真桜は最初から納得してませんでした。



お見合い用の写真だって、



結局、撮らせてくれなかったでしょう?」




……お見合いってなんのことだろう?




お姉ちゃんのことが気になって



廊下の隅で身動きせずに息をひそめる。




高圧的で切れやすく、



頑固で短気の独裁者。




そんな気難しいお父さんに、ハラハラしていると。




「明日にでもアメリカに部下を送って、



真桜を日本に連れ戻す。



見合いは絶対に中止にはしないからな。



真桜が戻り次第、席を改めて設ける」




お見合い⁈




まさか、お姉ちゃん、



それが嫌でアメリカに……⁈




お姉ちゃんが、お見合いなんてするはずがないのに!!