「あら、お父さん、もう帰って来たのかしら」




パタパタと音をたてて、お母さんが玄関へと向かう。




……そういえば、お父さんはどう思ってるんだろう?




高校生の娘が婚約なんて、



お父さんが納得しているとは到底思えない。





そっか! お父さん、おじいちゃん達を説得するために



帰ってきてくれたんだ!





ホッと胸をなでおろしたところで、



駆け足で客間に入ってきたお父さんが、



その光景に凍り付いている。





……あれ?





「お義父さん、これはいったい?」




おじいちゃんに問いかけるお父さんの姿に、



ものすごく嫌な予感がする。





……もしかして、お父さん、なにも知らされてないの?





娘の縁談話を、父親が知らないなんてこと、ある?





信じられない想いでおじいちゃん二人に、視線を向けると。




おじいちゃん達は目を合わせて立ち上がり、



その場に立ち尽くすお父さんの肩に手を置いた。





「あとは、博之くんに任せたよ」




「西園寺社長、頼んだよ」





……ええっ?





おじいちゃん達はお父さんを高圧的な笑顔で威嚇すると、



客間を出て行ってしまった。