軽くノックをして客間の扉を開けて、



目に飛び込んできたその光景に立ち尽くす。




「……え?」




そこにいるのは、



おじいちゃんと、



おじいちゃんの知り合いらしき和装の男の人と、もうひとり。





━━━━━━九条さんが座っていた。





ぽかんとしていると、おじいちゃんのしわがれた声が響く。




「こちらは私が親しくしている九条さんと、


その孫の千里くんだ。千里くんとはもう会ってるな」





……ど、どうして、ここに九条さんが?





「彩梅、聞いてるか?」




「は、はい!」




ということは、この和服のひとは、九条さんのお祖父さん?




九条さんは表情を強張らせたままじっと固まっている。




「彩梅も座りなさい」




おじいちゃんにうながされてソファの片隅に


ちょこんと座ったけれど。





突然現れた九条さんにドキドキしすぎて、


心臓が今にも口から飛び出しちゃいそうだよっ……




すると、おじいちゃんにくわっと見据えられて、


ビクリと背筋を伸ばす。





「先日の見合いに、


真桜の代わりに彩梅が行ったというのは間違えないか?」





威厳たっぷりの凄みのある声で


おじいちゃんにたずねられて、こくんとうなづく。




どうしようっ。




こんな大ごとになるとは、正直思っていなかった。




まさか、相手のお祖父さんまで怒って我が家にやってくるなんて!