勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。

コタロウを挟んで河原に座って、九条さんと夕陽をながめると、




水面にオレンジ色の光が跳ねて輝く。




「夕陽が綺麗ですね」




「彩梅もすごく綺麗だよ」




もう勘弁してほしい……




コタロウをなでる手を止めて、九条さんをちらり。




「あ、あの、く、九条さん、



そんなこと言う人でしたっけ?」




「彩梅にははっきり伝えておくことにしたんだよ。



彩梅の鈍感さは、かなりやばいレベルだから」




「……私、鈍感ですか?」




「うん。でも、そんな彩梅も可愛いし」




もうどんな顔したらいいか、わかりません……!




ちらりと見上げると、



九条さんの優しい眼差しに包まれて



ずっと抱えていた想いがこぼれ落ちていく。




「九条さんとコタロウと一緒に過ごせるこの時間が、



すごく楽しかったんです。



でも、いつか九条さんと離れなきゃいけないんだって



覚悟してたから。



今、こうして九条さんの隣にいることができて、



……すごく嬉しい」




「一緒にたくさんの思い出、作っていこうな」




泣き笑いの顔で返事をすると、



九条さんにくしゃりと頭をなでられた。