コロコロとスーツケースを転がして門まで行くと、



九条さんが現れた。




夏の光を浴びて目を細める九条さんに、



ぽーっと見惚れる。




半そでの九条さんも、やっぱりかっこいい。




「それじゃ、九条さん、彩梅のことよろしくね。



私たちは夜の便で出発するから」




すると、九条さんが家の奥をのぞきこむ。




「あの、彩梅さんのお父さんは?」




「いいのよ、いじけてるだけだから」




お父さん、いじけてるって言われちゃってるよ……




「それでは、俺からまた改めてメールで連絡しておきます」




「ごめんなさいね、意地張ってて」




呆れるお母さんに、九条さんが穏やかに笑いかける。




「彩梅さんの見合いが決まったとき、



彩梅さんのお父さんがすぐに連絡くれたんです。



ほかの奴と見合いが決まった、それでいいのかって。



だから、彩梅さんのお父さんには感謝しかないです」




お母さんと笑顔で言葉を交わしている九条さんが、



夏の日差しにキラキラ輝く。