「婚約破棄は西園寺家からの申し出だ。



だから、……これからは、こうしてふたりで会うことも、



連絡を取ることも出来なくなる。



今日はそれを伝えるために来た」




「で、でも、どうして、急に? 



そんな、勝手な……」




「本当に勝手だよな……」




視線を落とした九条さんは、



どこか納得しているようにも見えて、



気持ちばかりが焦る。




「で、でも、私は、これからも、



九条さんと……その、



た、たとえば、友達として会うとか、そういう……」



頭のなかは混乱していて、



喉の奥がかすれて上手く言葉がでてこない。



だって、どうして、急に……?



「婚約破棄が西園寺家からの申し出である限り、



俺と彩梅がふたりで会うことは、許されない。



西園寺家から、もう彩梅とは会わないように言われた」



「そんな……‼」



どうして、そんな大切なことを勝手に決めちゃうの……?



婚約しろって言ったり、会うことを突然禁止したり、



どうして私たちの気持ちを全然考えてくれないの⁈



「理由は?」



震える声でたずねると、



九条さんがゆっくりと首を横にふる。




勝手に婚約を決められて、今度は勝手に破棄されて。



その理由も教えてもらえないなんて……



遠くを見つめたまま、九条さんが言葉をつなぐ。