満開の桜を眺めながら、



木製のベンチに座ると、九条さんがぽつり。





「俺さ、今回のこの見合い、結構ムカついてて」





「私も、怒ってます! 



お姉ちゃんにやりたいことがあるのを知ってて、



こんなやり方でお姉ちゃんを拘束しようとするなんて、



いくらなんでもひどいなって」





「まさにそれ。



家同士の結婚なんて政略結婚でしかないからな。



でも俺は今、彩梅さんと一緒に過ごせて楽しい。



ここに来て良かったよ」





九条さんの言葉に心からホッとする。




私が代理で来たことで、



不愉快な思いをさせてしまわなくて良かった!





「ということで、



きみのお父さんの承諾も得てることだし、



昼飯一緒にどうですか? 



どうせなら別の場所で」





……はい?





いたずらな顔をして笑う九条さんに、ぱちくりと瞬き。





「えっと、で、でも」





「どこか行きたいところ、ある?」





「あ、あのっ」





高校生だってこともまだ伝えられてないし、



お父さんとお母さんに、



ここから移動していいのか聞かなきゃいけないし、



考えなきゃいけないことはたくさんあるけれど。




帯に手をあてて、ぎゅっと目をつぶる。





……もう、限界。





「どうした?」




「お腹が、……すきました」




「……は?」