「ごめんな、テスト前なんだよな。



勉強、終わらせないとな」




九条さんのおかげで、



わからなかったところはスッキリと解決できたけれど、



最近、九条さんの様子が少しおかしい。





どうしたんだろう?





「遅くまでありがとうございました」




家の門の前まで送ってもらい、頭を下げる。




「遅くなっちゃったし、挨拶していくよ」




九条さんが門に手をかけたところでお母さんが顔を出す。




「あら、彩梅、おかえりなさい!」




「九条さんに勉強教えてもらってたの」




「聞いてるわよ」




お母さんはにっこりと微笑んでいるけれど、



九条さんはいつお母さんに連絡したんだろう?




「あの、彩梅さんのお父さんは?」




「それがまた急に仕事が入ったんですって。



ごめんなさいね」




眉を下げるお母さんに、



九条さんが穏やかな笑顔をかえす。




「それではまた改めてご挨拶にうかがいます。



じゃ、彩梅、夜、電話するな」




「はいっ」




月明かりが輝くなか、



九条さんの後ろ姿を見えなくなるまで見送った。




いつからか、



眠る前に九条さんと電話で話すようになっていた。