「でも、九条さんに出会えたから、



私は西園寺の家に生まれてきて良かったと、




心から思っています」




「好きだよ」




「……え?」




風に混じる九条さんの声を聞き返す。




「彩梅のそういうところ、すごく好きだよ」




急にそんなこと、言わないでほしい。




心臓が痛いほどに、



ドキドキして苦しくなってしまうから!




「彩梅、お父さんに改めて話がしたいって、伝えておいて」




「はい」




「じゃ、またな」




つぎの瞬間、



一歩近づいた九条さんの両腕に



ほんの一瞬閉じ込められて、目を見開いた。




し、心臓、爆発するかも‼




「こ、これも、特訓、ですか?」




「どうだろうな。おやすみ、彩梅」




なんだか九条さんの言葉とか態度が、



いつもよりも甘く感じるのは気のせいかな。




距離とか、すごく近かったし、手もつないじゃったし!




よく考えたら肩とか抱かれちゃって!




い、今だって、抱きしめられていたような……!




「ひゃーっ!」




「彩梅、ご近所迷惑だから静かにしてね」





両手で顔を覆ったところで、お母さんに怒られた。