門まで九条さんを送りながら、ぽつりと零す。




「最近、お父さん、ものすごく機嫌が悪いんです」




門まで九条さんを送りながらぽつり。



すると、九条さんが梅の木の下で足を止めた。




「あのさ、彩梅はこれまで



西園寺家を重荷に感じたことって全くないの?」




それは、ずっと私が九条さんに聞きたかったこと。




「九条さんにとって、九条家は重荷ですか?」




「……正直、重荷だと思ってた時期もあるよ。



彩梅はそんなふうに思ったこと、なさそうだよな」




九条さんの言葉に、小さく笑って目を伏せる。




「私は末っ子で気楽な立場だから、



家のために生きる、なんて軽々しく言えるんです。



でも、お姉ちゃんや九条さんは違いますよね。



真剣に家を継ぐことや、その先のことを考えてるから、



重荷にもしがらみにも感じるんだろうなって思うんです」





「彩梅だって、ちゃんと考えてるだろ」





「でも、背負ってきたものや、



期待されてきた熱量が全然違う。



だから、せめて自分にできることをと、思ってきました」




暮れてきた空の色が優しくて、



こうして九条さんと一緒にいることができて、



嬉しくてたまらない。