少し混んだ電車のなかで、九条さんをちらり。




「どうした?」




「い、いえ」




扉の前に立ったのはいいけど、



両手を扉についた九条さんがすぐ目の前に迫っていて。



ふわりと九条さんの香りにつつまれて、



心臓がとんでもないことに!



「あ、あの、九条さん」



「ん?」



「電車、そんなに混んではいないような」



「あー、でも、ま、いいだろ。これで」



よくないです。



ドキドキしすぎて、心臓、潰れます……



「つうかさ、もう少し気づけよ」



「?」



「見られてるだろ、まわりから」



「……目立っているのは九条さんですよ?」



「あのさ、頼むからもう少し自覚してくれ」



「へ?」



きょとんと首をかしげると、



九条さんにこつんと頭を叩かれた。



「バカ彩梅」



ーーーーーーーなぜ?




電車を降りると、すぐに手を握られて飛び上がる。




「く、九条さん⁈」




「彩梅のリードの代わりだよ」



ううっ。



九条さんは、コタロウくんのお散歩気分なのに、



私はこんなにドキドキしてるなんて




九条さんには絶対に言えない!