「彩梅、また顔が赤くなってる」




甘く笑う九条さんを、ちらりと睨む。




「九条さん、そういうこと簡単に言うの、



よくないと思います。



だからみんな誤解して期待しちゃうんです。



さっきの人だって、きっと……」




「彩梅以外の奴に、期待させるようなことを言うわけないだろ。



それより、彩梅も期待してるの?」




なんて残酷な質問。




高校生の私が、



九条さんに相手にしてもらえないことくらい分かってる。




「私は期待なんてしません! ちゃんと分かってます!」




強がって答えると、くしゃりと頭をなでられた。




「彩梅は、なにも分かってないよ」




でも、自分の気持ちが



九条さんにあることくらいは、分かる。




たとえ、相手にしてもらえなくても、



九条さんのことを好きな気持ちは大切にしたいから……



甘く笑った九条さんに、精一杯の笑顔を返した。