「九条さん、
……ここ、笑っちゃいけない場所なんですか?」
「は?」
「みんな、さっきからこっち見てるから。
笑っちゃいけない場所なのかなって」
「ぶはっ! 相変わらず彩梅の感性、ぶっ飛んでるよな。
そもそも、大学構内で
セーラー服姿の彩梅と一緒にいたら目立つだろうし、
遠慮なくイチャイチャしてるし。
なにより、普段、笑わない俺が笑ってるから、
珍しがられてるだけだよ」
……?
「は?」
「だから、
いつも笑顔ひとつ見せない不愛想な俺が笑ってるから、
珍しいんだろ」
「それは誰の話ですか?」
「俺、九条千里の話ですが?」
「え?」
「だから、彩梅のその反応、
ホントに反則なんだって!」
「でも、私、九条さんほどよく笑うひと、
知りませんよ?」
「それは彩梅と一緒にいるからだろ。
着物で澄まして歩いているかと思えば派手に転びかけるし、
浅草の食べ歩きも、泣きそうになりながら我慢してるし。
挙句に天ぷら屋でいきなりひっくり返るし!
笑いのポイントが多すぎるだろ」
そ、そっか、私がまぬけ過ぎて笑われてたんだ……
「さっきだって、
『大好きだ』って言われて告白されたのかと思ったら、
いきなりキレるし。
彩梅がどう思ってるか知らないけど、
俺、無気力で無関心で、冷徹ってよく言われる」
「嘘っ! よく笑って、優しくて、カッコよくて、面白い!
っていうならわかるけど」
「……だから、面白いってなんだよ」
「あれ、九条さん、気づいてないんですか?
九条さん、すごく面白いですよ?」
「それ、褒めてないよな?」
「ものすごく褒めてます!」
九条さんと視線がぶつかり、笑い合う。
「俺は彩梅が思ってるほど大人じゃないし、
優しくもない。彩梅はさ、まっすぐだよな。
眩しすぎるほどまっすぐ。
だれも触れたことのない宝石みたいだよ」
不意の褒め殺しは、心臓に悪い。
……ここ、笑っちゃいけない場所なんですか?」
「は?」
「みんな、さっきからこっち見てるから。
笑っちゃいけない場所なのかなって」
「ぶはっ! 相変わらず彩梅の感性、ぶっ飛んでるよな。
そもそも、大学構内で
セーラー服姿の彩梅と一緒にいたら目立つだろうし、
遠慮なくイチャイチャしてるし。
なにより、普段、笑わない俺が笑ってるから、
珍しがられてるだけだよ」
……?
「は?」
「だから、
いつも笑顔ひとつ見せない不愛想な俺が笑ってるから、
珍しいんだろ」
「それは誰の話ですか?」
「俺、九条千里の話ですが?」
「え?」
「だから、彩梅のその反応、
ホントに反則なんだって!」
「でも、私、九条さんほどよく笑うひと、
知りませんよ?」
「それは彩梅と一緒にいるからだろ。
着物で澄まして歩いているかと思えば派手に転びかけるし、
浅草の食べ歩きも、泣きそうになりながら我慢してるし。
挙句に天ぷら屋でいきなりひっくり返るし!
笑いのポイントが多すぎるだろ」
そ、そっか、私がまぬけ過ぎて笑われてたんだ……
「さっきだって、
『大好きだ』って言われて告白されたのかと思ったら、
いきなりキレるし。
彩梅がどう思ってるか知らないけど、
俺、無気力で無関心で、冷徹ってよく言われる」
「嘘っ! よく笑って、優しくて、カッコよくて、面白い!
っていうならわかるけど」
「……だから、面白いってなんだよ」
「あれ、九条さん、気づいてないんですか?
九条さん、すごく面白いですよ?」
「それ、褒めてないよな?」
「ものすごく褒めてます!」
九条さんと視線がぶつかり、笑い合う。
「俺は彩梅が思ってるほど大人じゃないし、
優しくもない。彩梅はさ、まっすぐだよな。
眩しすぎるほどまっすぐ。
だれも触れたことのない宝石みたいだよ」
不意の褒め殺しは、心臓に悪い。



