そのとき、



近くを歩いていた女の人たちが九条さんに気づいて、



ざわりと辺りが賑やかになる。




「ねえねえ! あれ、九条くんじゃない?」




「やだ、あの子だれ?」




「高校生⁈」




九条さんが、その人たちの視線を受けて言葉を止める。




や、やっぱり、



制服でこんなところに来ちゃいけなかったんだ……!




「女子高生と婚約してるなんて、



面白がられて、すぐに噂になるだろうな」




九条さんは全く気にする様子もなく、



立ち止まった木陰で大きく伸びをしているけれど。




「……迷惑かけて、本当にごめんなさいっ」




申し訳なくて、九条さんの顔を見ることができない。




「迷惑だなんて全く思ってないよ。



むしろ、会いに来てくれて良かった。ありがとな」




こういうときの九条さんは、本当に優しい。




だから、辛い。




だってこんなに優しくされたら、



どんどん好きになっちゃうよ。