勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。

でも九条さんに会えて声を聞けただけで、



この二週間悩んでいたことなんて



一瞬で吹き飛んでしまうくらいに嬉しくて、



心が明るくなって。




こんな気持ち、隠しておけるはずがない。




「相手にされてなくても、



九条さんのこと困らせちゃうってわかっていても、



大好きなものは仕方ないんです!



私、彼氏とか、本当にほしくないんです。



広い世界も知らなくていいんです! 



九条さんとこうして会えるなら、それが一番うれしいんです!」




「……なんでキレてんだよ」




「キレてないけど、恥ずかしいんです! 



本人の前で、しかもこんな場所で心の準備もないまま!」




「心の準備って、俺たち一応婚約者なんだよな?」




「だって、それは……」




形だけのものだから。