勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。

九条さんと手をつないで構内をぬけると、



今度は鋭い視線があちらこちらから突き刺さる。




「九条さん、ホントに変な噂になっちゃうから!」




必死に手をはなそうとするものの、



ぎゅっと強く握られた手は簡単にはほどけない。




「変な噂、じゃないだろ。彩梅は俺の婚約者なんだから。



それに彩梅が嫌がったら、かえって怪しまれる。



つうか、通報される」




……うん、たしかに。




その一言で、九条さんに素直に従うことにしたものの、



九条さんの手はすごく大きくて、ごつごつしていて、



頬っぺたがますます熱くなる。




「九条さん、手、大きい……」




「こっぱずかしいから、そういうこと口にするな!」




九条さんは口を尖らせているけれど、



この状況もかなり恥ずかしいです!




すると、まっすぐ前を向いて歩きながら、



九条さんがぽつり呟く。




「あのさ、さっきの『俺のこと、大好き』って」




ううっ。聞き流してほしかった……!