勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。

「……で、彩梅はなにを頑張るの?」





九条さんに顔をのぞきこまれて、



かあっと頬っぺたが熱くなる。




「九条さんと一緒に帰ること、だと思います」




「じゃあ、頑張ってもらおうかな」




「え?」




顔を上げた瞬間、ぎゅっと手を握られた。




「ひゃっ! く、九条さん⁈」




「あのさ、もう少し慣れろよ、頼むから」




「だって、手、手が!」




「もうちょっとだけ、俺の婚約者っぽくしてて。



中途半端に噂されるより、堂々としてた方がいいだろ」




「で、でも、私、制服着てるから……」




「だから、どうしたんだよ。彩梅は彩梅だろ」




「あ、あの、でも」




「あのさ、ここ、かなり注目浴びてるから、



移動してもいい?」




九条さんの視線を追ってぐるりと見回すと、



中庭に立つ私達のことを、



2階や3階の窓から見ている人たちがいる。




うわわっ! これは大変!




「九条さん‼ 移動! 移動しましょう!」