勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。

「えっと」




『ホントに結婚しちゃえば』




小鳥遊さんの一言を思い出して、顔がかあっと熱くなる。




すると、九条さんが私の頬っぺたをつまむ。




「なんか、ムカツク」




「痛い……です」




涙目で九条さんを見上げると、



九条さんの両手にふわりとほっぺたが包まれた。




その柔らかい笑顔を見ていたらホッとして、



涙が浮かんでくる。



だって、二週間ぶりの九条さん。



で、でも、絶対ダメ!



こんなところで泣いたら、ますます九条さんを困らせる!




ぎゅっと唇をかんで堪えるけれど。




「彩梅? どうした?」




じっと綺麗な瞳で見つめられて。




「あ、あはっ、久しぶりに九条さんに会えたから……



なんだか、嬉しくて、ご、ごめん、なさいっ……」




「お前はホントに……」




手のひらで慌てて涙をぬぐうと、



九条さんの腕にぐいっと引き寄せられた。




「はあ、やっと彩梅に会えた……」




「……………え?」