勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。

「あのさ、千里と彩梅ちゃんは、家同士が認めてて、


正式に婚約してて、結婚するかもしれなくて、



なにが悪いのって話じゃん。少なくとも、



玉の輿狙いで千里につきまとってる高坂には関係なくね?」




小鳥遊さんが吐き捨てる様に呟くと、



その女の人は背中を向けて行ってしまった。




ど、どうしよう!




大変なことになっちゃった……!




やっぱり、こんなところに私が来ちゃいけなかったんだ……!




「あ、あの……ご、ごめんなさい!」




「なんで彩梅が泣きそうになってんだよ」




「だって、結局、迷惑かけることになっちゃったから……! 



女子高生と婚約なんて、どんな噂になるか……!」




「家同士が決めたことなんだから、仕方ないだろ?」




「でも……」




九条さんは笑いながら私の頭をぐしゃぐしゃとなでているけど、



頭のなかはもうパニック状態。




「彩梅は俺の婚約者って紹介されるのが、嫌なわけ?」




「そ、そんなことあるはずない……!」




「じゃ、問題ないだろ?」




九条さんは笑って



私の頭をポンポンとたたいているけれど、



もうドキドキしすぎて顔は熱いし、



胸は苦しいし、気持ちは焦るし……




「すいませーん、



俺の前でイチャつくの、やめてもらえますかー?」




小鳥遊さんに冷やかされて、必死で抗議。




「い、いちゃついて……ないです‼」




「久しぶりに彩梅と会えたんだから、



少しくらいイチャつかせろ」




く、九条さん⁈




びっくりして九条さんを見上げると、



いたずらに笑う九条さんの両腕に抱え込まれた。




し、心臓! 止まっちゃうっ!