勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。

「彩梅、自分で自己紹介して」




九条さんに肩を抱かれたまま、



破裂寸前の心臓を抱えてその女の人に顔を向ける。




「は、はじめまして、女学院高等科の3年、



西園寺……彩梅、です」




これは、……つらい。




こんなに綺麗な女のひとに、



制服姿で婚約者だって伝えたところで、



納得してもらえるとは思えないよ……




「西園寺って、あの、西園寺家の?」




「そう、じーさん同士が仲良くて、



あっという間に話が進んだ。



彩梅の卒業を待って正式に婚約する」




「く、九条さん⁈」




正式に婚約するなんて、



そんなこと言ったら大変なことになっちゃう!




「いくら家同士が決めたことだからって、



女子高生と婚約なんて本気なの?」




「お前には関係ないだろ?」




「だからって、高校生に手だすとか……」




「手なんて出してねえよっ」




苛立つ九条さんにびくりと体を揺らすと、



ぎゅっと九条さんに抱きしめられた。




うわわっ!




こ、こんなに人がいる場所で、だ、抱きしめるとか!




九条さんの腕のなかで、パニックになっていると。




「高坂、お前さ、マジでどっか行けよ」




九条さんの冷たい声に、息をのんだ。