「まあ、あと5分くらいなら。



な、あや……め、……いや、真桜」




中途半端に腰を浮かせたまま、



お父さんが困ったように視線を泳がせる。




「真桜さんは大学院生だとうかがっておりますが」




「は、はい」




と、答えたものの……




ど、どうしようっ!




お姉ちゃんの研究のことなんて聞かれたら、



一発アウト。




薬学のこともお姉ちゃんが研究していることも、



なにひとつ答えられない!




「真桜は、薬学を専攻しておりましたが、



大学では経営についても学ばせました。



今は本人の好きにさせていますが、



ゆくゆくは、この西園寺家の後継者として、



しっかりと後を継いでもらうつもりでおります」




どしりと座りなおしたお父さんが、淡々と語りだす。
 



そう、これが、お父さんの本音。




なにをしても人並みの私は、



お姉ちゃんの代わりになることなんて、できない。




私に出来ることと言ったら、



こうしてお見合いの席に座ることぐらい。




私もお姉ちゃんみたいに優秀だったら、



西園寺家やお父さんの役に立てたのかな。




そんなことを思いながら、



下を向いてきゅっと口を結ぶと。




「せっかくの機会ですので、



是非、真桜さんとふたりの時間をいただきたいのですが」




「……え?」