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 あのキスの後、わたしは全力で涼輔くんから逃げた。
 謝られるのが嫌だったんだ……


 理由なんて怖くて聞けない、分かってるけど……聞いたら、きっとズタボロだ。


「ねぇ……普通、どうでもいい人にキスとか……するのかな?」
「え?! どうしたんですかいきなり! ……どうでもいい人にキスなんてしなくないですか?」

 後輩ちゃんは、わたしの唐突な質問にびっくりしながらも、顎に手を添えながら答えてくれた。

 涼輔くんは、メイドのわたしの事が好きで……でもほかの女の子にも平気でキスしたり優しくしたりする……


 とにかくモテるから、遊んでるように見えるけど……涼輔くんはそんな人じゃないのは嫌という程実感してる。

 だから分からなくて怖いんだ……。