あんな風に傷付けたかった訳じゃない、あんな表情させたくなんてなかったのに……


 でも、涼輔くんを騙してお付き合いしても、いつかバレてもっともっと傷つけてしまうかもしれない。

 純粋無垢で飼い犬みたいな涼輔くんを騙して傷付けたくない……


 わたしは一体どうすればいいんだろう……



 * * *




「おはよー! ……って、涼香……どうしたの?」
「悩み事のせいで全然眠れなかったの……」


 そう、あの事がずーっと頭から離れなくて、オールレベルで眠れなかった。

 頭がクラクラする。


「ひょっとして恋煩い?」
「へ……?!」

 図星ですとバレバレなほどに驚いてしまったせいで、イオは何かを察したみたい。


「どんな人なのー? 出会いはっ? なにがあったの?」
「わたしにはもったいなさすぎる人、バイト先で出会って告白された……」


「え? 相手は涼香のこと好きなんだよね? 付き合っちゃえばいいじゃん」


 何食わぬ顔でサラッと言っちゃうイオ。尊敬するよ……

「でもね、その人はわたしのこと全く知らなくて……」
「全く知らないのに告白してきたの?! 怪しくない?!」

 だめだ、やっぱり相談なんてするんじゃなかった、バイトでのわたしを隠したままどう説明すればいいんだろう……