窓に手を触れた時、自分の手が透けていることに気づく。


驚き目を擦るが、それは変わらない。


そっか。


私はもう消えなきゃいけないんだ。


時間が無いんだ…


いつまでもずっといられないとは思っていた。


いつかは消えるし、いなくなると思っていた。


けど、このままずっと康太達と一緒に過ごせたら幽霊なりに楽しいのにと思っていた。


「そんなのありえないのにね…康太…私を忘れないでね…」


康太、康太。


大人になってもおじいちゃんになっても私は君が笑顔でいられることを1番に願ってる。


誰と結ばれ、共に寄り添う相手と永遠を誓ったとしても私は君が大好きで大切。


だからお願い。


私を忘れないで。


私は窓に触れた手でぎゅっと拳を握り膝から崩れ落ちた。


静まる教室に私のすすり泣く声だけが響いていた。


黒板には隅に小さく体育祭までのカウントダウンが書かれている。


もうすぐ体育祭という赤いチョークで書かれた文字。


康太の応援団姿が楽しみだった。


だけど今だけはもう少しゆっくり時が流れて欲しい。


そう思った。