「美春。お母さんの娘でいてくれてありがとう、ずっと大好きよ。」


見えてないはずなのに、何故かお母さんは私の目を見ているようだった。


もう二度と話せない。


もう二度と一緒に日常を過ごせない。


私は確実にお母さんを置いて行ってしまった。


その事実な変わらない。


だから、せめて願うよ。


お母さんがこれから先、笑って生きていけますように。


辛い気持ちが一日でも早く和らぎますようにって。


「お母さん、私はお母さんの娘で産まれて幸せだったよ。ありがとう、本当にありがとう。」


康太が私の言葉を伝えるとお母さんは笑顔で頷いた。


ごめんねじゃない、きっとお母さんに伝えるべき言葉はありがとう。


心からの感謝だ。


「そういえば美春のお父さんの写真ってないんですか?」


「あるわよーちょっと待ってね。」


お母さんはそういうとバックをゴソゴソ探り始める。


そして赤い定期入れを取り出した。


その中から1枚の写真を取り出す。


その写真にはお母さんと生まれたばかりの赤ちゃんの私と…黒い短髪の男の人が写っていた。


「この人よ、美春のお父さん。美春に似てるでしょー」


そう言いながら嬉しそうに写真を見せる。


お母さんがお父さんだという人はとてもいい笑顔で写っている。


「美春と目が似てる…」


康太が言うとお母さんはそうでしょーと自慢げに話す。


私のお父さん。


私の知らない、私の事を大切に思っていてくれたお父さん。


おそらく私と同じ病気になり、同じように苦しんだお父さん。