「いや、そんなことは…」


私が言おうとした時、治療室から1人の医師が出てくる。


「東堂さんの付き添いの方ですか?」


康太はその声で立ち上がり返事をする。


「あの、おばさんは?」


「命に別状はありませんよ。倒れた原因としては過労だと思われます。念の為に検査するので2日程入院してもらいますが大丈夫ですよ。」


「分かりました、ありがとうございます。」


ほっと胸を撫で下ろす私を見て康太は


「ほら、大丈夫だろ?」


と得意げに言う。


私は笑って元気よく頷いた。


病室にいくとお母さんはすやすやと寝ていて救急車で見た時より顔色が良くなっていた。


「お母さん、ごめんね。私のせいだね…」


私はどうしてこんなにも大切な人を苦しめてしまうのだろう…


「美春…」


お母さんが小さい声で呟く。


お母さん、ここにいるよ。


私はここにいる、そばにいるよ。


私は静かにお母さんの手に自分の右手をのせた。


病室はとても静かで壁にかけられた時計の秒針が大きく響いていた。