そうやって強がって周りの人に心配かけないようにしていた。


だけど結局康太にはバレてたんだよなぁ。


言葉にせずとも分かった。


その後私のお見舞いに来た康太はずっと私の手を握ってくれていた。


自分の温もりじゃない、康太の温もりを感じることがどんなに私にとって安心することだったことか…康太は知らないんだろうな。


自分の右手を見てふっと微笑む。


「諦めなきゃ、だよね。」


涙で少し視界が歪んだ時、リビングからガシャーンと大きな音がする。


え?なんの音?


急な事で身が固まる。


私の足元にはお母さんが仕事履いてる黒いパンプス。


お母さんが帰ってきてるという事だ。


まさか…


嫌な考えが頭に浮かび、急いで音のなったリビングに行った。


そこには、割れたコップの散らばった破片と倒れて目をつぶるお母さんがいた。


「お母さん!?ねぇ!どうしたの!?」


体をゆずろうとしても私の手はお母さんの体をすり抜ける。


嘘でしょ、なんで…


「お母さん!お母さん!起きて!ねぇ!」


必死に呼びかけるがお母さんはピクリとも動かない。


そんな…ダメだよ…


どうしよう…今の私じゃどうすることも…


その時真っ先に浮かんだ顔があった。


「お母さん、ちょっと待ってて!死んじゃダメだよ!」


私は走って康太の家に向かう。


玄関のドアをすり抜けるとそこにはいつも通りプリンがいた。


プリンは私を見てパタパタと尻尾を振る。


「プリン!康太は?康太!どこにいる?」


そう言うとプリンは大きな声でワン!と吠えた。


「なんだよ、プリンうるせえぞ…って美春お前…どうした?」


私の今にも泣きそうな顔で何かあったと悟った康太は急いで私に駆け寄る。


「康太…お母さんが…」