「本当にありがと。」


「まあ、はっきり言ってあの康太は調子狂うのよね…康太は笑ってないと…」


私はその言葉にうなずく。


「だって、からかいたくてもからかえないじゃない?」


真穂のその言葉が意外で私は一瞬考えが止まる。


「え?そっち?」


「え、だってそうでしょ。あの美春バカをからかえないなんて面白くない。」


美春バカって…


そういえば真穂と康太って毎日言い合いばっかりしてたっけ?


私のお見舞いに来る度に言い合いして私が止めて…


あのなんでもない日々が今では愛おしく感じる。


あの二人の言い合いを見るのが何気に楽しみだったんだよなあ。


「真穂、私出来るかな?」


私の問いかけに不思議そうにこっちを見る真穂。


風が窓から入ってきて真穂の黒髪をゆらす。


「何を?」


「康太の時間をすすませること。」


真穂は1度下を見て何かを考えた。


そしてまっすぐな目で言った。



「出来るよ、美春なら。いや、美春だから出来るよ。」


私はその言葉に微笑みを返す。


夕日が学校全体を赤く照らす。


康太の赤く染まっているサッカー姿がいつまでも続くように祈った。