康太に急かされ、恐る恐る後ろに乗る。


「俺に掴まって…は無理か。落ちないようにしろよ」


いくぞーっと康太が自転車のペダルをこぐ。


その瞬間ふわっと心地よい風を感じる。


それと共に私の目の前を過ぎ行く景色。


私、病院にほぼ居たから知らなかったけど…


外ってこんなにキラキラしてたんだ。


生きてる頃は病院の中にいることがほとんど。


窓だけが私の"外"だった。


「康太、綺麗だね、景色。」


康太は自転車を漕ぎながらちらっと私を見た。


そして、また前を見て


「そうだな、今日は晴れてるしな。」


といった。



康太が全力で自転車を漕いだおかげで学校にはギリギリに間に合った。



「お前のせいで汗だくなんだけど…」


そう言って康太はシャツをパタパタさせる。


「もっと早く起こしてくれればよかったのに。」



「起こしたっつーの、お前が起きないから…また目が覚めないのかと思ったわ。」


少し切なそうな顔をする康太。


私はそんな康太に笑いかける。


「幽霊のまま目覚めないってことありえないでしょ、私そんな眠りたくないけど?」