「康太、私の事忘れていいんだよ。私は後悔なんてないんだよ、ほんとに」


「は?」


「康太、私が死んだことを引きずってるでしょう?いいんだよ。そんなに引きずらなくて…康太は私と違って未来があるんだから。私のことは忘れて…」


そう言いかけた時、康太はバンっと近くの教科書を机に叩きつけた。



その音に驚いて言葉をやめてしまう。



「そんなこと…言うなよ。無理に決まってんだろ、お前を忘れるなんて…」



「でも、康太そのままだとしんどいまんまじゃん!私は笑ってて欲しいよ…」



「お前がそう願ったとして…俺には無理なんだよ。お前がいない世界で笑っていけるなんて…そんなこと無理だ、お前がいるから笑えるんだよ…そんなこと言うなよ。」



あまりにも康太が苦しそうに言うから私はそれ以上言え無くなった。



私は言葉につまり、下を向くしか出来なかった。




「お前を忘れられて楽になるなら…俺は苦しくてもいいからお前を覚えていたいよ。」



「康太…」



嬉しい言葉だと思う。



私が生きてきた意味があったと思える言葉だ。



だけど…康太。



私は苦しいよ。



嬉しいけど…苦しいよ。