「適当に言って逃げるのなしです。友達と話しててその話題になったんです。私、好きだと思う人はいるんですけど恋したってどういう事を言うのかなって…これが恋って分からないなぁって思って。」


酒井はそう言って俺に早く答えを言うように目で訴える。


俺も正直、恋も愛も分からない。


でもきっと美春に対する気持ちがそうなんだろうと思う。


「俺はその相手に対して笑っていて欲しい、幸せであって欲しいと思うのが恋をするということなんじゃないかなと思う。大切にしていきたいと思えたらもうそれは特別な感情なんじゃないかな。」


酒井は俺の答えを聞くとまた窓の外を眺める。


「先生もそう思えた相手がいたんですか?」


「いたよ、今もそうだ。」


そうですかと言って酒井はバックを持つ。


「じゃあ先生、私は帰ります。」


「おう、気をつけて帰れよ!」


俺がそう言うと酒井は俺に一礼して教室のドアに向かう。