あ、あの死んだ時と似てる感覚だ。


でもあの頃と違う。


気持ちがあの時より何倍も穏やかで暖かさが心地よい。


"美春"


ふいに名前を呼ばれた気がした。


康太?


名前を呼ばれた方を見るとそこにはぼんやり男の人が見えた。


康太…じゃない。


それが誰なのか直ぐに分かった。


お母さんの病室で見た写真の中の人だったから。


私と似た顔の人。


その人は私に近づいて手を差し出した。


「美春、行こう」


私はその手に自分の右手をかさねて握る。


「うん、お父さん行こう。」


康太、いつか会えたら私の知らない康太が生きた時間の話をしてよ。


どんな人と出会ってどんな体験をしたのか教えて。


私ずっと待ってるから。


早く来なくていいから、ゆっくりでいいから。


いつかまた。