学校から走ってきたのは私のお墓から見える海だ。


康太と再会した場所。


最期の時間を過ごすのはここにすると決めていた。


私はこの海が大好きだ。


小さな頃よく康太と遊びに来ていた。


康太はお母さんに起こられると毎回海に行っていた。


私が迎えに行くと不機嫌な泣き顔で体操座りして海を眺めていた。


そんな時は帰ろうと言っても絶対に動いてくれない。


"美春1人で帰れよ"なんて言われてしまう。


だから私はいつも康太の横に座って何も言わず待っていた。


そのうち康太が立ち上がり、こう言うんだ。


"帰ろう、お腹空いた"って。


そして自分の右手を差し出す。


その手を握れば康太はふわっと柔らかい表情で笑ってくれた。


そんなことが何度もあったのを覚えている。


その逆もあった。