「出たんだって!」

 ゆかりの唐突な一言に、誰も理解出来ないらしく、目をぱちくりさせ、声を出さずにいた。

「幽霊に決まっているでしょ。それも私たちが使っているその目の前の廊下を歩いていたのよ」

 全員、廊下側に視線を送る。敏也だけが仲間外れのようにひとりぼっち。

「うそだ。そんなの誰が見たんだ?」

「用務員さんよ。そして、あそこで消えたの」

「あそこって?」

 ゆかりは一瞬、間をおいて

「使っていない外階段よ」

「ええ!」

 廊下をでて右側に封鎖したドアがあり、その向こうに外階段がある。校舎内から開けられない。外の踊り場側のドアに後付けで施錠してある。詳しい理由は知らないが、この外階段から落ちた生徒がいたらしい。それで出られないように施錠をしたと、噂が伝えられていた。

 ゆかりの話を聞いて、生徒たちは黙って、それそれ幽霊が廊下を歩いている姿を想像した。

「恐い!」

 と、一人の生徒が言った。みんな同じ気持ちだ。