「ただいま、みくる」

「お帰りなさい、社長」

「その呼び方変えよう、誄でいいよ」

みくるはビックリした表情で俺を見つめた。

「俺、そんなに変なこと言ったかな」

「私は社長に雇われている身なので、社長を名前で呼ぶことは出来ません」

「じゃあ、俺の彼女になってよ」

みくるは顔を真っ赤にして「冗談はやめてください」と俯いた。

「みくるは可愛いな」

「可愛くなんかありません」

みくるは拗ねた表情を見せた。

「あっそうだ、みくるに携帯買って来たんだ、ハイ、これ」

みくるは不思議な顔をして「携帯代払えないので私は結構です」と俺に突き返した。

「大丈夫だよ、俺の名義だから、みくるは払う必要はないよ」

そしてみくるに携帯を再度渡した。

「社長はどうしてそんなに親切にしてくださるんですか」

みくるは真っ直ぐに俺を見た。

「みくるを放っておけない」

この時俺はみくるに惹かれていた、それにお袋と重ね合わせていた、貧しくて頼る人もいなくて病気で亡くなったお袋が哀れだった。

貧しい生活を経験した俺はみくるの大変さを理解出来る。
俺の力でみくるを貧困生活から救ってあげたい。
お袋には何もしてあげられなかった。
今の俺には地位も金もある、みくるを貧困生活から救ってあげられると思った。