ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-



「ご、ごめん」

「いや、謝るなよ。余計に傷ついた」


おーちゃんはいじけたように言った。

その姿が可愛くて、こっそり顔を緩める。

洗い終わった食器を片付けると、わたしはソファを背に寄りかかるおーちゃんの隣に腰を下ろした。


「まさかそういう趣味があったとは」

「心外だな。純粋に成長を感じたかっただけだって。中学の体育祭は、見に行ってただろ。去年はそれどころじゃなかったし……。別に下心はないよ、……ちょっとしか」


……ちょっとはあるんかいっ。


思わず心の中でつっこみながら、呆れた目を向ける。


「……えっち」

「いやいや。男のロマンだから、体育着」


なんて、変なことを真面目な顔で言われて、わたしはふうん、と気のない返事をしておいた。