と思って体を固くしたのもつかの間、おーちゃんの手はわたしの横をすいっと通り過ぎて、サイドテーブルの時計に触れた。
「……」
「なに。今日はお前、こっちで寝たいの?」
目覚ましをセットしながら聞かれて、浅はかな期待が打ち砕かれる。
わたしは、大人しくベッドから降りた。
ふ、と鼻で笑われる。
「……キス、されると思った?」
ベッドの上から、いじめっ子の表情で首を傾げられ、わたしは慌てて顔を背けた。
「意地悪」
「……そんな警戒すんなよ。もうしないから」
ガツン、と鈍器で殴られたような気分。
……そういう意味で、言ったわけじゃないのに……。
密かにショックを受けながら、床の隅にたたんである敷布団を引っ張って準備する。
おーちゃんは元々ひとり暮らしだから、当然ベッドもひとり用のセミダブル。
わたしがこっちで寝泊まりするようになって、わたし専用のお布団を用意してくれた。
「俺が布団で寝るからベッドで寝ていいよ」というおーちゃんの優しさを、さすがにそれは、と断って、こういう形になったんだ。


